指導者インタビュー Vol.3 浦田佳穂さん

インタビュー

流経大柏での活動について

松田:今年ついにチーム創部15年目、浦田さんが就任4年目で初の全国大会出場となりました。これまでの活動について教えてください。

浦田:完全にチームをイノベーションしましたね。自分がトップレベルでサッカーをしてきた目線があるからこそ、いずれはそういうレベルに持っていきたいと思っていますが、現時点で高校サッカーの強いチームは、ルールや規則を重視するチームか、主体性が高いチームかの2つに分離していると感じています。良い悪いではなく、どちらも社会に必要だと思っていますが、少なくとも選手たちには「愛される子」であってほしいと考えています。流経大柏の子たちって愛嬌あるよね、と言われるようなチームを作りたかったんです。初めてここにきた時は真逆で、選手たちは怒られないようにプレーしたり、人間関係や上下関係もピッチで悪影響が出たりするほどガチガチの状態でした。まずはピッチ上が必ずフラットになるように既存のルールを取っ払うところから始まりました。

松田:最初のガチガチの状態から変化が見られるまではどれくらいの期間を要しましたか?

浦田:1、2年はかかりましたね。上級生は納得しないというか、自分たちは上級生にガツガツ言われて、教え込まれてきたので、いざ3年生になった時にどうしても下級生に優しくできない。でもそれは違うよと伝え続けました。基本的に1年生がミスしても1年生のことは怒りません。荷物のミスなどがあれば3年生を指導します。ミスしたのは1年生だけど、その責任は3年生にある。最後にすべてをチェックしてゴーサインを出しているのは3年生。もし1年生を怒るなら自分たちで行動すれば良い。

浦田:社長が動かない会社に勤めたい?という話をよくします。社長に、愛される会社になるために挨拶運動をしましょうと提案されました。提案してきた社長が、挨拶運動をしない会社と社長が率先して挨拶運動をしてくれる会社と、どっちに入りたい?と考えた時に、当然一緒に行動してくれる社長がいる会社だよね、と。

浦田:また、組織についてもワンピースを例に話します。ワンピースのルフィってリーダーとして実際どうなの?という部分もあるけれど、誰からも愛されている。それは彼がみんなのことを愛しているからで、仲間がやられそうになったら死ぬ気で守るし、自分がやられそうになった時は仲間をちゃんと頼る。逆にルフィに倒されてく海賊団の船長は自分がやられそうになった時に、味方を盾にする。そういうリーダーは勝てないし、そんなチームは勝てないよね、と。そのような話をし続けましたが、今の3年生はよくやってくれています。

松田:学校の部活という性質上、組織を改革した上で結果を出すことの最短は3、4年なのかもしれません。そういった意味では今回最短で結果が出たんだなと感じました。

浦田:そうですね。チームのコンセプトは明確にする。もちろん学校の部活動なので、他の先生の指導を無視することはできないですし、これまでの名残を完全に取っ払うのは難しいですが、ルールを守ることで愛される人になれるわけではない。愛されるチームになるために自分たちがどうあるべきか?と問うことで、選手の主体性が高くなり、愛されるために必要な行動を選択できるようになりました。今回の全国出場は自分たちの理念を中心に、チームとしての行動はどうする、サッカーだったら勝つためにどうする、を突き詰めてきた結果だと思います。

トレーニングでの取り組み

松田:サッカーのトレーニングで工夫された点などがあれば教えてください。

浦田:どの言葉を使ったら説得力があるかは常に考えていて、サッカーの話がピンと来ていない時は、別のものに例えて伝えます。例えば、舞台は主役の人だけでなく、悪人などの脇役や照明などのスタッフがいて成り立つ。サッカーも同じで、脇役のおかげで主役の人がボールを保持するのが楽になったり、ボールが回ったりする。主役を引き立てるためになんとなくだらだら横にいるのではなく、強いスプリントをしたり、時には犠牲になったりも大切だよ、などと伝えたり。

浦田:また恋愛に例えて、初対面で告白しても上手くいかないじゃないですか。それはゴールに向かってむやみにシュートを打っても入らないのと同じこと。告白も相手の好みを知って、遊びに誘ったり、たまにおちょくったり、じらしたりするのも必要ですよね。だからゴールを奪うためにも、相手をじらしたり、引き出したりすることが必要だよね。けど、じらしすぎても遠ざかるから何事もタイミングが大事だよ、といった話もします。でも時には急に好きですって言っても成功することもあります。だからゴールが空いてるならロングシュートが入るかもしれない。といった感じで(笑)

松田:なるほど。楽しそうです。もし私が選手だったら、「好きです!」とか言いながらシュートしちゃいますね(笑)

浦田:実際にそう言いながらプレーする選手がいるんですよ。それでシュートのタイミングが早かったら、「うん、振られてるよ!」みたいな。(笑)もう1回ぐらいデートに誘おうよとかっていうのが練習の中の会話になります。その雰囲気によって、お互いどうしてほしいかを伝え合う要求の壁が低くなるんです。上級生とかに対しても、今のもう1回当てて、こうやってこうしてくださいとかじゃなくて、今のはもう1回デート誘ってください!今のは早く告白しすぎです!みたいな会話が練習の中で出るから盛り上がるし、ちゃんとサッカーのイメージが出来上がっていくんです。

浦田:女の子の特徴かもしれませんが、サッカーだけの話になるとポカーンとなったり、真面目な話だけになるとつまんなくなっちゃったりしちゃうので、違う観点から話をすることが大切で、選手がそれで話を聞いてくれる感覚が自分も好きなので、指導中は意識していますね。

松田:ぜひその手法はもっと発展させて、引き出しをまとめといていただいて、書籍化しましょう。(笑)

女の子特有の指導法

松田:女の子にサッカーを伝える上で別のイメージで伝えることはすごく重要だと思います。

浦田:プロのレベルになったら、みんながサッカー選手だから、サッカーの話が出来ると思いますが、育成年代の子達はみんながサッカー選手なわけではないので、サッカーを学んでいく方法は身近なものにリンクさせることが適切なのかなと思っています。

松田:育成年代でそういうイメージが持てると、サッカーを好きなまま理解していくことができて、いずれは自然とサッカー選手になっていく。女の子は特にサッカーをサッカーで説明してしまうと、つまらなくなってしまうし、私には理解ができないから向いてない、と感じてしまう選手がいるんじゃないかと感じています。

浦田:そうですね。置いていかれる選手が多いと思います。うちに来る選手たちも上手いのにびっくりするぐらいサッカー知らない子が多いと感じています。

影響を受けた指導者やロールモデル

浦田:大学時代に出会った吉村先生は本当に大きな存在です。また、大学の監督でサッカーをきちんと教えてくれた青葉さん。あと、国体活動でお世話になっている千葉FAの水庫先生はかつて習志野高校で指導されていた方で、色々なことを学ばせていただきましたが、もう本当に人間じゃない考え方をしてらっしゃる(笑)千葉はサッカー王国ですし、そういう方々が身近にいるのでありがたいです。あとペップが好きで、彼のアイデアや教えるサッカーがチームを強くするというより、彼がいるからチームが強くなると思っていて、教える技術はもちろんのこと、それを伝える熱量や人としての部分が大事なんだと感じさせられます。

スキルアップの方法

浦田:基本的に空いた時間にサッカーを学ぶっていうのは少ないです。もちろんU15の試合を見に行ったり、WEリーグ観戦したりもしますが、それはあくまでも仕事の一環。自分の時間を使ってスキルアップというより、日常から学んでいる感じです。趣味としてアニメや映画をよく見ますが、いつの間にか自分の頭の中では「あの選手これに似てるな」「こういうこと伝えたら選手たちがおもしろいって思うかな」といったように自然とサッカーのアイディアになっています。

浦田:あと読書も小説以外は嫌いで、特に自己啓発は武勇伝でしかない感じがしてしまって、読んでてつまらない。だけど、小説は色々な登場人物に出会える。いそうでいないような人物が出てきて、その人物の心情が言葉に書かれていたり、思考がちゃんと言葉として載ってるのが小説の良さで、「この人はこう言われたらこういう思考するんだ」みたいに感じられるから好きです。

松田:なるほど。ある意味、人との出会いがある。その発想は勉強になります。

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